| 第166話 メガネの日(2026年5月) 昨年末ある人がこう言った。 「分かった!お前が負け犬ぽいのはメガネが割れてるからだ!」 確かにアニメ世界における負け犬の描写はのび太を筆頭にメガネが割れてる。 挽回すべく言われた直後にメガネ屋行った。が、僕の顔は店員曰くラグビーボール型らしく横幅の頂点が耳の前にある。従ってそのフレームは頂点を越え、ボールを巻くようにして引っ込んだ耳へゆかねばならず際立った柔軟性が求められた。 そういうフレームあるにはある。現に装着中のフレームがそれで、10年前チタンのそれを買い求め、レンズ込みで6000円だった。 今回もそれぐらいで買えると思い込んでた。が、2000円刻みで1万円ぐらいまでレンズ込みの安いシリーズがあり、そのどれもが僕のラグビーに対応できなかった。10本ぐらい試した後だろうか「ムリです」店員そう言って2万円の高いフレームを出し始めるし僕のコメカミも試着疲れで限界、輪っかが締まった孫悟空みたいに頭痛を覚えた。 そういう流れで割れたメガネは数ヶ月放置、負け犬ぽい見た目は受け入れる事にしたけれど今度は視界が白くなってきた。プラスチックレンズの経年変化だそう。更に老眼が進行しメガネがないと遠くが見えない。メガネ越しだと近くが見えない状況に陥った。これで困ったのがデスクワーク。装着しなきゃモニター見えない。外さなきゃ手元の資料が見えない。 「俺は一日何百メガネの上げ下げすりゃいいんだー!」 そんな時に「遠近両用5500円」メガネ屋の広告を見、コメカミ痛いの我慢して安いの衝動買いしてしまった。こういう買い物はやはりいけない。初めての遠近両用レンズ、デスクワークは良くても日常がダメ、酔ってるみたいにフラフラした。 みんな言ってた。遠近両用は長く付けなきゃ慣れないそう。でも安いフレームは顔が痛い。30分装着すると梅干し食べてスッパマンみたいな顔になり結局慣れないまま放置された。 「メガネ問題どうすりゃいい?」 その話を呑み屋でしてたら有力な情報を得た。大手チェーンのメガネ屋が3850円で遠近両用レンズに交換してくれるらしい。それも他の店で買ったフレームOKだそう。 「レンズ交換!その手があったか!」 すぐ行った。で、その日の内に交換してもらえると思いきやレンズがくるのは一週間後だそう。 メガネ屋から連絡がきた。一刻も早く見た目負け犬からの脱皮、そして頻繁なる着脱からの脱却、そしてクリアな視界を得たい。 ボロのメガネをメガネ屋に預けた。交換に30分ぐらいかかるらしい。できたら電話するから適当にぶらぶらしとくよう言われショッピングモールを裸眼で歩いた。 「見えん!」 寝る時以外は外さないから怖いぐらい何も見えなかった。安い袋ラーメンでも探そうと思ったけど値札が一切見えない。 「おーカラクリさん」 誰かに挨拶されたけど誰が誰だかサッパリ分からぬ。 「見えません、名乗って下さい」 言いながらメガネ依存の日常をしみじみ知った。 15分ぐらいでメガネ屋から電話がきた。何か問題が生じたそう。すぐ行ったら若い女性がゴメンナサイと頭を下げた。発注ミスで違うレンズが届いたと言う。 「えー!」 僕は田舎に住んでる。このメガネ屋は最寄りじゃあるけど18km離れてる。更に再発注となればまた一週間かかる。何か言ってやりたいけど「我々のミスです」即座に罪を認められると何も言えない。正直に勝る誠実なし。言えば責めたみたいになる。 「分かったよ〜ん!出直すよ〜ん!」 おんぼろメガネが返ってきた。店員が気合を入れて磨いたけど何も変わらなかった。いつものラグビー顔に戻ると白い視界が戻ってきた。 まったく何のために山を下ったのか。せめて美味いものでも食って帰ろう。馴染みのラーメン屋に寄った。一口すすった。若いバイトが爆笑した。 「ウケる!真っ白ですよ!マンガみたい!」 湯気でメガネが雲った。またメガネか。 こういう日もある。 |
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